車輪の下で、読書感想文

 
「車輪の下で」は主人公ハンスの神学校への受験、そしてそこでの生活を経てやがて破滅へと向かう少年の姿を描く、ヘッセの自伝的小説である。
破滅と言っているだけあって、全般を通して暗い、というより主人公よりも地の文の暗さが目立つ、ヘルマン自身が己の鬱憤を晴らしているような感じがして、すっきりといい気持ちで小説を読みたいという人にはあまりお勧めはできない。

他の作品と比べてみると、たとえば一見すると「異邦人」の主人公ムルソーにも似ているように思えるが、どちらかというと主人公ハンスは「変身」のザムザのような精神の持ち主である。

とにかく地の文もハンスも全般を通してネガティブである。
だからあんまりいい気分で小説を読むことができない。
…というのも、ほぼ全ての成功したり、明るい場面は毎回まず間違いなく確実に訪れる失敗や挫折へと陥るために、読者は「ああ、またどうせ悪い方向になっていくんだろ…」という暗い思考、または「なにやってんだよ」という苛立ちを感じてしまうためだ。

この感覚は上でも言った、以前読んだカフカの「変身」と似ているように思えた。
「異邦人」も結局は破滅の話なのだが、ムルソーは別にそんなにネガティブな男ではないし(無気力ではあるが)、読んでいてもこちら側がネガティブになることはない。
ところが「この車輪の下で」では読者側にネガティブさが伝染してしまうのだ。
まあ、一方ではこれもヘッセの狙いの一つとも言えるのかも知れない。確かにヘッセの社会に対する鬱々とした鬱憤が嫌と言うほどにこちらに迫ってくるので、嫌でもそれを感じてしまうこと請け合いであるから…。

神学校での生活も基本的に暗い…。
楽しいはずのクリスマスでさえ、クリスマスを楽しんでいる他の生徒達を意図的に対比させ、疎外感を演出する暗い物となっている。
唯一の明るい箇所は受験後の少しの間だろうか、まあ、それでもそれは結局最後につながる暗い複線、または対比となってるので、それも暗いもいえるのだが…。
…とこのように感想を書いていても、読んでる人間の方が暗くなってしまう。それほどに暗い、というか重くて、もやもやとしているのだ。
文章もそれほど軽快に読み進めないようにわざと重い感じで書いているのか、なかなかに読むのも時間がかかる。

………
総括すると、この「車輪の下で」はヘッセの鬱憤の固まりである。読んでる自分としてはそこまで社会に対し憤りを感じることもなかったし、どちらかというと最後に感じたのは「ああ、どうしてこうなっちゃったかなぁ…もう少しどうにかすればいい人生を送れただろうに」という妙な無念さである。
ああ、そう。
無念とか後悔である。
口酸っぱく言うが、この本にエンタメ小説のような爽快さを僅かにでも求めてはならない。
明るくて楽しい学校生活、読み終わった後に「ああ、いい話だな…」という気分に浸りたいのなら、ケストナーの「飛ぶ教室」の方をお勧めする。(一応釘を刺して置くが、核戦争後を描いた飛ぶ教室(漫画)とはまるっきりの別物である)

ちょっと暗い話になりすぎたので、少し話を違うベクトルに向けようと思う。
神学校の中で登場するハイルナーという人物が登場するのだが「主人公はハイルナーだったっけ?」と混乱するほどに中盤はその人物中心の話になる。(名前も微妙に似てるので実際混乱した)
あとがきで訳者が「ハイルナーはヘッセのもう一つの性格を現した人物」と言っているのだが、確かにそれはなるほど共感できる。確かにハイルナーはもう一人の主人公だ。
ハイルナーの性格は活発でどちらかというと悪ガキ的な人物。
ハイルナーの存在はこの小説の中でも数少ない清涼剤なのではあるが、結局彼が去った後、小説自体もまたどんよりと暗い深みに沈んでしまうから、この点、ヘッセの心情を映しだしているのかもしれない。
ハイルナーはヘッセの理想でもあり、一方でたまった鬱憤を具現化した形でもあるように思えた。

えー………。
まあ、えーと…なんというかこれは悩ましく痛ましい話といった感じだっただろうか…。
なんだか結局、すっきりとしなかったような気もするが、それもヘッセの伝えたいメッセージの一つなのかも知れない。
…ってなことにして感想を終わりにしたいと思う。
 

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  |i::::::;:':::::::::::::::::::::::i| ::::://,::::..    " ニニヽ、⌒ij~";_ ィ /:::::::|:::::〃::: : ヽ
─|`ー=====一 | ::::::|_|;;、:::.__y-ニニ'ー-ァ ゚‐─'───┴────── ‐
::::::`ー―――‐一´ ̄~   ̄       ̄  

 
次回は池波正太郎著「鬼平犯科帳(全巻)」か、司馬遼太郎著「花人」の予定です。


進学校での生活に落ちぶれたハンスは故郷での新たな生活を始めるが・・・。

 
追記
なんで今回は絵がついてないの?(書いた当初)と思ったあなた、するどい。
え~パソコンが壊れました。
思えば結構前に自組みしたやつなんで致し方なしといった感じですかね。
以前にもブログで言ってたとおり、壊れる前兆はバリバリにありました。
・・・で、どうも原因の方を探ってみた感じなんですが、どうもグラボ関係ではなくてマザーボードの方が壊れていたようです。
(BIOS画面からウィンドウズロゴが出るまで10分くらいかかる上にその後100パーセントでフリーズ。接続機器を全部引っこ抜いて、メモリも入れ替えしてみてもだめだったんで、まず間違いなくマザーボードでしょう、それともCPUか?まあ、マザボ買ったら結局CPUも取り替えないといけないんで、どっちが故障でもあんまり関係ないんですが・・・)
それにしても出費が痛い・・・まあだいぶ昔の爆熱ペン4だったんで、いい加減乗り換えたいな~と思っていたので、まあまあいい機会ですかね・・・ただ、OSそのままでマザボ入れ替えは結構ややこしいという話なんで不安ですが・・・。

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     /⌒  ⌒\
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  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   これを機に新型マザーボードに乗り換えるお!
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