―大事な宝物―



ある豪邸。
その富豪の屋敷にはとてつもない宝物があると皆のもっぱらの噂でした。
富豪の話では

「我が家の家宝はそれだけで小さな国が買えてしまう程の高価な物だ」
だそうです。
その噂を聞きつけて一人の泥棒が屋敷に忍び込もうとしています。

「この屋敷の中にある宝を取れば俺は大金持ちだ」
独り言を呟きながら泥棒は器用な手つきで窓ガラスに穴を開けそこから鍵をはずします。
泥棒は窓を開けて静かに屋敷の中に忍び込みました。
延々と長い廊下が続き、その宝物があるという部屋にたどり着きました。
扉の鍵を器用な手つきで開け中に忍び込みます。
部屋の中は真っ暗でしたが泥棒にはその宝物がどこにあるのかすぐにわかりました。

「これはすごい、こいつが宝物に違いない」
大きな茶色いみずぼらしい木の台座の上、そのみすぼらしい台座とは不釣り合いな程にそれは輝いていました。
まばゆい宝石がちりばめられた金の腕時計。
あまりにまばゆすぎて普通の人は恥ずかしがってつけるのをためらうほどです。それがつけれる人はこの家の主人くらいのものでしょう。
泥棒はそおっと台座の上から腕時計を拝借します。
そしてそのまま泥棒は顔に満面の笑みを浮かべながら暗い夜の闇の中に消えていきました。





次の日の朝。
屋敷の中は大騒ぎです。
皆泥棒が入ったと口々に叫びながら屋敷の中を右往左往。
屋敷の主人も寝間着のまま青ざめ、宝物のある部屋へと走って向かっていきます。

「ああ………なんということだ…もし家宝が盗まれたのなら私は生きていけない…」
泣きそうになりながら主人は部屋の中に入っていきます。
でも、家宝は無事でした。
主人の青ざめた顔が段々元に戻っていって赤々としたまん丸の元の顔つきに戻っていきます。
主人は笑みを浮かべながら安堵の息を吐き出します。
そして隣にいた執事に向かって言いました。

「ああよかった…ところで家宝の上に置いておいた安物の時計はどこだい?」
















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