―花咲じいさん―



これは未来の話。
ある一人の科学者が遺伝子を組み換え、品種改良を繰り返し、数十年にも及ぶ試行錯誤の上、一年のほとんど花が咲く桜の木を作り上げた。
科学者は言った。

「これで毎日花を見ることが出来ます。一年の内、花が咲かないのは少しの間だけ」
世界中に一年のほとんどに花をつけるその桜が広まり人気となった。
その内、その科学者は更に研究を重ね一年中花が咲く梅の木を作り出した。
次に一年の内ほとんど花が咲くチューリップを作りだし、そうしてこの世にある花の咲くもの全ての植物が一年のほとんど花をつけるようになった。
だが、科学者は研究を止めることはない。
彼は本当はあまり大きな花の咲くはずのない植物にも花を咲かせ始めてしまった。
杉からは七色に輝く五輪の花が、松からは大輪の黄色い花々を咲かせた。
次第に花を咲かす植物は世界中に広まり世界は花だらけになった。
それこそ宇宙から見てもわかるくらいに、地球が大きな花になったかのように花が咲き乱れた。
その光景を見てその科学者は満足したのか

「ああ、私はこれで満足だ。沢山の花に囲まれて私は幸せだ」
と言ってそのまま眠るように息を引き取った。





………だいぶ間があって。

これはずっとずっと未来の話。
一人の科学者が花のついていない木の前で大勢の記者達の前で言った。

「これで毎日葉っぱを見ることが出来ます一年の内花が咲くのは少しの間だけ」




もっとも
これは花咲かせないじいさんの話。





















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